「なに!?今日はお前さんの誕生日だって?」

「うん」

「やれやれ、俺でも掴めない情報を隠し持ってるなんざ…やっぱお前さん、変わった女だな」

「聞かれたら教えるけど、わざわざ誕生日を言う人なんていないでしょ?」

「そりゃそうだ…」

笑いながら残り僅かとなっていた酒を一気に飲み干す。

「…さて、折角誕生日を教えて貰ったんだ。その礼に、なにかひとつ…お前さんが望む情報をやろう」

「ホント!?」

「あぁ、だがひとつだけだぞ」

「うんっ!」

目をキラキラさせるの姿を見て、思わず吹き出しそうになる。



…ったく、ガキって年でもねぇだろうが。



そう思いながらも、こいつが何を望むのか…それを楽しみにしつつ酒をグラスへ注ぐ。










「決〜めた!」

グラスの酒が半分なくなった頃、ようやく聞きたい事が決まったらしい。

「どれ、言ってみな」

さてさて…
帽子屋のことか、アリスのことか…
はたまた猫や女王陛下のことか…
なんでも教えてあげやしょう。

そう考えてた俺の思考は、彼女のひと言で真っ白に変化する。

「眠りネズミさんのお部屋見せて」



カシャン…



酒瓶がグラスにあたり鈍い音を立てたが、店のざわめきにかき消された。
けれども、その音は妙に俺の心に反響するよう…鳴り響く。

「…ちょっと待て、今…」

「だから、眠りネズミさんのお部屋見せて」

おいおい、勘弁してくれよ。
なんだって不思議の国にイレギュラーで来ちまった得体の知れない女を部屋に通さなきゃならん。



――― 野郎の部屋に来るっつったら、考えられるのはひとつだろう…



頭をかきむしりながら横目で様子を伺うが、は無邪気に俺の方を見てやがる。



…だーめだ、こりゃ
コイツはただ、俺の家を見たいって…好奇心で言ってるだけだ。




はぁ〜〜〜〜〜〜〜

「眠りネズミさん?」

「…ちょっと、待ってろ」

ふらつく頭は酒のせいじゃない。
いくら安酒とはいえ、こんなに早く酔いなんて回るもんじゃない。





とにかくアイツの姿が見えない所で壁に寄りかかると、再びでかいため息をついた。

「ただ連れてくだけで済むか?いや…慎重派な俺としては、まずどこかへ出かけてからだな…いやいや、だが…」

いつでも冷静に物事を見極め、自分の保身のために動くこの俺が…ただひとりの女の言葉に惑わされる。

「…ったく、情報料としちゃ高すぎだぜ…」

けれど、の誕生日…は、恐らく今後必要となる重要な情報。
色んなヤツがまだ知りえないものだとしたら、これくらいは…安いモンかもしれない。

覚悟を決めるため、もう一度肺に溜まったなんとも言えない気持ちを大きく吐き出し…改めて深呼吸。
それを数回繰り返してから、席へ戻る。

「よーし、わかった。連れてってやる」

「ホント!?」

「あぁ」

少し高めの椅子から降りようとした彼女の肩に手を置いて、顔を近づける。

「だが、そこへ行くまで絶対目を開けるんじゃないぞ」

「え?」

「お前さんの願いは、俺の部屋を見せろ…であって、家に案内しろ…じゃなかったからな」

「…ぅ」

失敗したって顔が、妙に可愛らしく見えちまうのは…酒のせいって事にしちまおう。
もう、あれこれ色々考えるのは面倒くせぇ…。

「さて、では参りますか。私めの部屋へ…」

恭しく手を取れば、微笑んだ後…静かには目を閉じた。



さーて、あと頑張るのはオレサマの理性。
まぁ、慎重派な俺さまだ…今回は、様子見といきますか。

折角の誕生日…部屋で彼女を祝ってやるってのも、アリだろう。





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今年の誕生日で、初めてAre you Alice?のキャラのほぼ全員を使って書いた
一応、連続する話……です。
UPするために、コメントとタイトルを考え直しました。

Are you Alice?の世界は癒しです。
本編はキッツイんですが、CM集とか短編は笑いが詰まっていて癒されます。
眠りネズミさんは、ラジオとかで帽子屋さんとやってるけども、本編はそんな登場してません。
でも、あのいい声が聞ければ満足だ。

声が好きだよ!悪いかっ!!(笑)